コピーコントロールCD導入が指し示す音楽業界の未来(2)
text by KEN=GO→
 業界では最大の衝撃となったソニー・ミュージックエンタテインメントのCCCD導入。レーベルゲートCDという名の独自仕様ながら、親の作ったルール(CD-DA規格)を子が破るという図式になったからだ。広報を訪れ、率直に疑問をぶつけた。応対してくれたのは、SME広報室の井出靖さん。
 「レーベルゲートCDの検討は夏前くらいから行いました。他社と違う技術面含めてです。コピーコントロール自体はずっと課題で、数年来議論してきました。エイベックスさんの先行で、いろいろな話が入ってきまして、オーディオでの再生保証やマックユーザに未対応なこと含め、相当大変だなという意識を持ちました」ソニーのレーベルゲートCDが他社と違うのは、PCでの再生用に用意されたデータが比較的高音質であることと、HDへのコピーを許したこと(ただし2回目以降は1曲二百円を収録曲数分支払う)だ。そのため、ネット認証が必要になり、オーディオ部分の収録限界が65分となっている。
 「そもそもCD規格を作ったソニーなのに、何故レッドブックに反するものを採用するのかということは、皆さん思われるでしょう。ただ、大前提として親会社であるハード部門とソフト部門は個別の判断をしています。情報交換などは当然ありますが。我々としても、ソニーがCDの延長線上の著作権保護の仕組みを出してくれればベストだとは思っています。ただ、それが間にあってない。苦渋の決断とも言えるでしょう。ソニー関連会社の開発したKey2Audio含め他の技術も検証しましたが、導入実績含めミッドバーの技術が一番やりやすかったんですね。もしKey2Audioが改善して、いいものになれば将来的にはオーディオのデータ保護にはそちらを採用するかもしれないし、流動的です。我々は技術専門でなくあくまでソフト屋なので、現状では穴があるかもしれないですが、徐々に改善していくしかないと思ってます」
 そうは言っても、やはりお金を払ってCDを買う正規リスナーには負担を強いるものだし、私的複製もすべてだめ、オリジナル・ディスクを居間で聴けというのがレコード業界の指向する行き先なのか?
 「違います。独自のアンケートではPCで音楽を聴く人が6割以上で一番多かった。このひとたちを切り捨てるつもりはない。しかしできてしまった状況へ後付けでやってるわけですから、MP3のような利便性も、将来含め想定されるポータブル機器等すべてに対応することも、現状では不可能なんです」
 CD-DA規格のパテント期限がそろそろ切れる、だから各社新しいことをやり始めたとか、SACDDVDオーディオも普及が遅れているから、そこへ切り替えさせるための捨て石的規格がCCCDなのかとか、多様な妄想が渦巻く。密室決断〜強行導入というイメージが、CCCDにはあったからだと思われる。
 「ユーザがCD以上のメリットを見出して、スムースに移行しないと次はないと思います。パッケージである必要もないんですが、次は何なのか見極めなさいというのが我々のテーマで、ずっと模索しているんですよ。CCCDをやることで、売上が回復するとか過大な期待はしていません。著作権保護は売上問題とは別にやっていなければいけないことだった。売上を考えるなら、作品性や価格戦略のほうがもっと大きな要因だと思います」
 突然「発売中止だ!」とか、レコード会社のビジネス方針に一度ならず脅かされ、長い時間をかけて自分の表現を守る足場を築いていった忌野清志朗のように、メジャーからはCCCDを出し、自分のレーベルでは奔放な作品を、古い曲はネット配信でと、自覚的に活動の場を選び取ることも可能だろう。しかし、大半の作り手と聴き手は、この騒乱に乗じて企業が行う実験に翻弄されることを覚悟しなければならない。この船に船頭はたぶん、いない。
 「著作権の発想自体が古すぎる。巨大産業の既得権を解体しろ!」とまで極端なことを言うつもりはない。しかし、マイクロソフト(!)の研究者にすら“違法に入手したコンテンツが著作権保護システムを利用したコンテンツよりも利用者にとってはるかに使いやすいという経済学的帰結により、P2Pファイル交換がなくなることはない”なんて指摘されてしまうように、今にいたっての業界の慌てようは悪あがきにしか見えない。
 コンテンツがデジタル換算されたときの情報量がその価値とイコールになり、全部の音楽に映像をつけねば商品として成立しないような世界になる…、もしくは容器の物としての価値を高めるとか。いずれにせよそれは音楽そのものの商品性の本質とは離れてしまうから、一度消費したら残らないものに主流を移すしか生き残る道はないのかも。オリジナルに限りなく近いデジタルコピーを大量に売りさばき利益を上げるというビジネスモデルは、終焉のときを迎えるのかな。
 『海の上のピアニスト』でも一緒に観る? さっきMXで落としてきたんだけど。

※このテキストは「ミュージック・マガジン」2003年2月号に掲載された原稿を、ほんの少しだけウェブ用にアレンジし再掲載したものです。

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■関連サイト■
ミッドバー
マクロヴィジョン
(米コピープロテクト大手。ミッドバーを買収)
key2audio
JAYFREAK ONLINE
(CCCDのFAQなど充実)
音楽配信メモ
(技術系ライターが運営)
C堂7
(CCCD特集、BBSもある)
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