ストーリーライターズ・ナイトとは? 出演者紹介 イベント・レポート アンケート
#02 update:2006.12.20 イベント・レポート
佐藤大
藤津亮太
中島かずき
賀東招二
11月24日(金)、新宿のロフトプラスワンにて、第二回目となるストーリーライターズ・ナイト、『ストーリーライターズ・ナイト vol.2 〜脚色・アダプテーション〜』が開催されました。今回のゲストには劇団☆新感線の作家として舞台の世界でも活躍する中島かずき氏、『フルメタル・パニック!』などの人気小説を送り込み、作家としても活躍する賀東招二氏のお二人をお迎えし、アニメーションという枠にとらわれないトークが展開されました。
 まず第一部では司会を務める藤津亮太氏が登場。藤津氏が最近読んだ本として、澤井信一郎著の『映画の呼吸』という本を紹介。この本は映画監督によって書かれた本ではありますが、シナリオに関しても多く触れられているということで脚本家にとっても非常に勉強になるとのこと。

そしてホストの佐藤大と、第二回目のゲストとなる中島かずき氏の登場。中島氏は劇団☆新感線の座付き作家として舞台の世界で活動する傍ら、アニメの脚本、漫画原作など多彩に活躍する作家。現在はガイナックスによる新作アニメーション作品『天元突破グレンラガン』のシリーズ構成・脚本を担当しています。そしてもともと舞台脚本であった中島氏による原作『大江戸ロケット』が『鋼の錬金術師』のタッグである水島精二監督と、脚本家の會川昇氏によってシリーズ化されることも決定しています。トーク前には、会場のお客さんにそれぞれのプロモーション映像を公開していただきました。  中島氏は学生時代、漫画家志望だったとのことで舞台の脚本を書いている時でも「ライバルはドラゴンボール」という意識で作っていたとか。常にハイテンションが売りだという中島氏のシナリオは、こういった意識から作られていた部分があるのかもしれません。
 「そもそもなぜ脚本家という仕事に就いたのか」という話になると中島氏は「僕は平日はサラリーマン。脚本家の仕事は平日の仕事が終わった後か、土日に作業しているんですよ」という発言に会場からはどよめきが。中島氏は普段は出版社で勤務し、それとは別に脚本家としての仕事も同時にこなしているとのこと。
それだけで多忙であることは容易に想像できますが、「シナリオはなるべく一稿で終わらせたい」と、前回出演してくださったガイナックスの山賀氏と同様の発言も。実際に『グレンラガン』では週一ペースの勢いでシナリオを書き上げ、ガイナックスの担当者を驚かすこともあるとか。シナリオ作業に数稿を要する事が当たり前のアニメ関係者にとって、「一稿上げ」や「週一ペース」というのは驚異的なこと。その仕事に対するモチベーションはどこから来るのかと聞かれれば「トークの場でも会議の場でも、常に人を楽しませることや驚かせることがモチベーションになっている」といいます。その姿勢は本当に見習いたいものです。
そして「キャラクター像をどのように膨らましていくのか?」という質問に関しては舞台作家らしい答えが。舞台の世界ではシナリオの作業に入る前にキャストが決定する場合が多く、そのために既に決定したキャストのイメージを含めてキャラクターを作り上げる作業に入るといいます。それゆえにアニメーションの場合もキャラクターデザイナーに作品のキャラクターを先に上げてもらい、そのキャラクターを見ながらイメージを膨らましていく作業に入るほうが、キャラクター像を作り上げるのは早いのだとか。
 そして中島氏のシナリオ参考書として、野田昌宏著『スペースオペラの書き方』を紹介。この本は“スペースオペラ”と銘打たれているものの、SFにとらわれない具体的なライティングのテクニックが記されているとのこと。若干古い本ではありますが、もし入手することができるのであれば是非一読することをオススメします。そこに中島氏のシナリオ作成術のヒントが収められているかもしれないですよ。
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 そして休憩を挟み、壇上には佐藤大が登場し、第二部のスタート。最近の作品として、イベント当日にDVDが発売になった日清のカップヌードルのCMでお馴染みの『FREEDOM1』と、現在テレビ東京系で放送している『ライオン丸G』(企画で参加。現在はヤングガンガン誌のコミック版のシナリオを担当)を紹介してもらいました。また、今回の『〜脚色・アダプテーション〜』というタイトルはスパイク・ジョーンズの映画『アダプテーション』から拝借したとのこと。この作品はニコラス・ケイジが実在する脚本家のチャーリー・カウフマンに扮し、脚本家の苦悩を描いたコミカルかつリアルな作品。「この作品を見ればほぼ脚本家の生態がわかる」と、佐藤大お勧めの一本として紹介をしてくれました。

そしてお待ちかね、2人目のゲストとして賀東招二氏の登場です。壇上に上がる際に、ほぼ一人で空けた焼酎瓶を手にして会場の笑いを誘っていました。賀東氏は小説『蓬莱学園』シリーズで小説家としてデビュー。大人気ライトノベル『フルメタル・パニック!』を世に送り込み、後のアニメ版ではシリーズ構成・脚本を担当。また最近では大人気アニメ作品『涼宮ハルヒの憂鬱』の脚本も手がけるなど、さまざまなシーンで活躍中の小説家であり、脚本家です。 そもそも賀東氏のアニメーションとの最初の関わりは、原作者の立場としてシナリオ会議に参加したのが始まり。そこで原作者としてアニメ作品に関わって感じたことは、「意図しない伝言ゲームは作品を良いものにしない」ということ。つまり原作者側として伝えたニュアンスが、監督やスタッフの間に第三者が介入することにより、自分が意図したことと180度変わってしまうこともあるとか。それを避けるために賀東氏は “いつもニコニコと笑いながら見守る原作者” として本読みと呼ばれる脚本会議に参加し、監督らと納得のいく作品を作り上げていったそうです。
そしてその後、自らの作品である『フルメタル・パニック!』のシリーズ構成・脚本を担当することに。もちろん最初はシナリオの書き方などわからないのだから、小説のプロであっても脚本執筆に関しては当然ながら素人同然です。しかし「できるかどうかわからなくても、まず手を挙げることが大切」と、脚本を書きながら脚本の書き方を学んでいったようです。 小説と脚本の書き方の大きな違いとして、賀東氏は「他人に任せられる部分があるのが大きいですね(笑)」と、やや嬉しそうに発言。しかしそれは楽できるという意味ではありません。個人作業の小説執筆と違い、大勢の人間が集まって作業し、コンテと演出によって作品が大きく左右するというアニメーションの現場では、「いかに監督と演出に意図が伝わるか」ということを常に考えて脚本を書かなければいけないということ。また小説との大きな違いとして「シナリオは20分という尺にどうやったら収まるか。骨格を最優先に考えなければいけない」とも。
また、賀東氏は現在では『涼宮ハルヒの憂鬱』など、自分が書いたもの以外の原作を元にしたアニメーション作品の脚本も担当していますが、その際の脚本の書き方について問われると、「原作ファンを裏切らず、いかに作品の空気を読むか」ということが重要であるとのこたえ。「自分がオタクだから空気を読むことができるんでしょう」ということですが、そういう意味では賀東氏は原作者という立場で考えることもでき、かつファンと同じ目線に立つこともできる、非常に貴重な脚本家なのではないでしょうか。
そして賀東氏がお勧めした作品は意外にも映画『ダイ・ハード』。ブルース・ウィリスのハードコアなイメージだけが印象深い作品と思われがちですが、賀東氏曰く『最初から最後まで完璧な作品』と大絶讃で、すでに60回以上は見ているそうです。また、スタンダードな入門書として、ディーン・R・クーンツ著『ベストセラー小説の書き方』も紹介。どちらも現在でも手に入れやすい作品ので、機会があったらこちらも是非手に取ってみてください。

こうして賀東氏のトークも終了し、第三部は会場に配られたアンケート用紙から質問をフィードバックし、全員がその質問に答えていくというもの。今回はアンケートに書かれていた質問も「シナリオは頭から書くか。それともシーン毎に書いていくか」「セリフのリズムとは」など、より具体的な作業に関しての質問も多く、それに対して中島氏、賀東氏、佐藤氏が一つ一つ丁寧に答えていきました。三人の脚本家がそれぞれの意見に共感し、また考え方の違いに大きく驚くことも。前回よりも質問時間が多く取られていたこともあってか、最後のトークはより実践的な脚本に対する論議が繰り広げられました。 そして最後にホストの佐藤から「次回は大御所のゲストを呼びたい」と、来年に第三回目の開催も示唆。終わってみれば多くのお客さんにお越し頂くことができ、大成功に終わったこのストーリーライターズ・ナイト。集客的な部分だけではなく、終了後のお客さんの満足そうな表情がとても印象的でした。まだこのイベントに参加したことがないという方も、次回は是非とも新宿ロフトプラスワンにお越しください。

それでは、第三回のストーリーライターズ・ナイトでお会いしましょう! 
次回のイベントレポートでは、出演者、ゲスト、来場していただいたお客さまからいただいたコメントを掲載する予定です。お楽しみに。
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