それはつまり、物作りの技術論みたいな部分をはしょってしまう人が多いんだなぁと。もともと自分自身にもそういう部分があったんですが、S.A.C.(攻殻機動隊テレビシリーズ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』)で学んだことが大きかった。それは全員若いスタッフで、そのチームでやった経験が物語を作る上で非常に勉強になったんです。
例えば、俯瞰でものをみることなんかを学びました。そのスタイルやシステムは神山さん(監督:神山健治)たちと一緒に作ったことなんですけど、割とアニメ業界内では珍しいものだったようなんです。あと僕が好きな海外のドラマの脚本の作り方もそれに近かったと知ったんです。最近だと『LOST』、『Six Feet Under』とか『HOMICIDE-殺人捜査課』。ああいうドラマを作っているスタッフと、去年アメリカで話しができたんですが、僕らが期せずして神山さんとやっていたスタイルが、そのスタッフたちがやっていることと非常に近かった。
自分がいいと思っている脚本のスタイルはそのシステムからできているのがわかったんです。でも、このシステムは意外とあまり使われていない。このいい手法を人に伝えることができないものかと思っていたんですが、ちょうどその頃に自分の会社(フロッグネーション)で脚本家のチーム的なものを作って、そのシステムの話なんかをしていたんですが、それをもう少しオフィシャルな形で話せると、脚本家を目指している人に役立つのかもなぁ、と。反面教師でもいいし、自分のスタイルを作る時の判断材料でもいいし。
--- 何か参考になるものとしてのトークライブということでしょうか。
そういうふうになったらいいなぁと。最近、黒澤明さんに関する本が何冊か出ていて、『トラ!トラ!トラ!』の舞台裏の話や、脚本家の人の裏話とか。「どうして黒澤組の脚本はよかったのか?」ということとかそこにあるんですけど、それも含めて我至りな気分になって。
--- 個人プレーではなく、チーム全体でストーリーを構築していく作業に関して、それはかなり有効な手法だと。
そうですね。あと、イベントの契機で言うと、アニメの脚本ってあまり日の目をみることがなかったと思うんですよ。でも最近、脚本家でアニメをみてくれる人も増えてきたりもして。あと自分と同世代の脚本家の人たちと横のつながりもできたらなぁと。それはまず話からって思ったりして。その時にいい機会をもらったというか。ロフトプラスワンがあったという。